
「親が認知症になり施設に入所したため、誰も住まなくなった実家を売却して介護費用に充てたい」とお悩みではありませんか?
親が健在である以上、実家の名義は親のものであり子どもが勝手に売却手続きを進めることは法律上できません。
さらに、認知症によって親の意思能力が低下していると判断された場合、通常の不動産売買契約を結ぶこと自体が不可能になります。
この問題を解決し、合法的に実家を売却するために必要となるのが成年後見制度です。
本記事では認知症の親に代わって実家を売却する方法や成年後見人を立てる際の手順、売主が知っておくべき注意点を分かりやすく解説します。
親が認知症になると実家が売却できなくなる理由と法的リスク
不動産の売買は、法的な責任を伴う重大な契約行為です。
そのため、契約を結ぶ本人に自分が何をしているかを正しく理解する意思能力があることが大前提となります。
親が認知症を発症している場合、この意思能力が不十分であるとみなされ、子どもが良かれと思って手続きを代行しても、様々なトラブルや法的リスクを抱えることになります。
まずは、なぜ認知症のままでは実家を売り出すことができないのか、その具体的な理由とリスクを解説します。
●意思能力がない状態での売買契約は無効となるため
法律上、意思能力がない人が行った法律行為は後からすべて無効と判断されます。
仮に不動産会社や買い手と契約を交わし、引き渡しまで完了したとしても、後から親に売却の意思がなかったことが証明されれば、契約そのものが白紙に戻ってしまいます。
これにより、買い手から損害賠償を請求されるなど非常に大きなトラブルへと発展するリスクがあります。
●子どもが勝手に売却すると無権代理になるため
「自分が実質的に親を介護しているのだから、子どもである自分が代わりにサインすれば問題ないだろう」と考えるのは大きな間違いです。
親から正式な委任状がない限り、実子であっても他人の財産を勝手に処分する権限はありません。
これを通称無権代理と呼び、最悪の場合は他の親族や関係者から財産の使い込みとして訴えられる原因になります。
●銀行や法務局の段階で手続きがストップするため
仮に不動産会社との間で売り出しの準備を進められたとしても、最終的な決済や法務局での所有権移転登記の段階で必ずストップがかかります。
司法書士は契約の際、名義人である親の元を訪れて直接本人に売却の意思確認を行います。
この際、親が自分の名前を言えなかったり売却への明確な合意が示せなかったりした場合、司法書士は登記手続きを拒否するため、売却は不可能です。
実家を売却するために不可欠な成年後見制度の仕組みと利用手順
これは、家庭裁判所から選ばれた成年後見人が認知症の親に代わって財産の管理や不動産の売買契約を行う仕組みです。
ただし、この制度を利用するためには家庭裁判所への申し立てが必要となり、いくつかのステップを踏む必要があります。
具体的な手続きの流れを見ていきましょう。
●家庭裁判所へ成年後見人の選任申し立てを行う
まずは、親の住所地を管轄する家庭裁判所に対して成年後見人を選んでくださいという申し立てを行います。
申し立てができるのは、配偶者や4親等内の親族などです。
この際、親の認知症の度合いを証明するために医師が作成した診断書や親の財産目録、戸籍謄本といった大量の書類を準備して提出する必要があります。
●家庭裁判所による調査と後見人の選任
申し立てを受けた家庭裁判所は提出された書類を審査し、必要に応じて親本人への面談を行います。
その後、誰を成年後見人にするかを裁判所が決定します。
子どもが「自分が後見人になりたい」と希望を出すことはできますが、親族間に意見の対立があったり財産額が多かったりする場合は、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるケースが多いです。
まとめ|認知症の実家売却は早めの現状把握とプロへの相談が不可欠
親が認知症になってからの実家売却は、成年後見制度の利用と家庭裁判所の許可という2つの大きな法的手続きをクリアしなければならず、時間も費用もかかる大がかりな作業となります。
まずは、親の現在の認知症の進行度合いを確認し、本当に意思能力がない状態なのかを正しく把握することがスタートラインです。
もしまだ認知症の症状が軽いのであれば、本人の意思能力があるうちに家族信託や任意後見制度を結んでおくことで、裁判所を通さずに子ども主導でスムーズに売却できる可能性も残されています。
まずは実家の処分方針について親族間でしっかりと話し合いましょう。








