
アスベストが売却時に問題となる理由
アスベストは、1970年代から2000年代にかけて多くの建物に広く使用されていましたが、その繊維を吸い込むことで肺がんや中皮腫といった深刻な健康被害を引き起こすことが明らかになりました。
この健康リスクが広く知られているため、アスベストが含まれている可能性のある物件は、買主にとって大きな懸念材料となります。
2022年の法改正により、一定規模以上の建物を解体・改修する際には、アスベストの事前調査が義務付けられました。
これは、売主が建物を解体して引き渡す場合だけでなく、買主が将来的に解体や大規模なリフォームを検討する可能性を考慮すると、売却前のアスベスト調査が非常に重要であることを意味します。
アスベスト調査費用と売却価格への影響
アスベストの調査や除去には費用がかかりますが、これらの費用を惜しんで適切な対応を怠ると、売却価格の大幅な下落や買主とのトラブルにつながる可能性があります。
アスベストの調査費用は、戸建て住宅で数万円から十数万円が相場です。
自治体によっては費用の一部を助成する制度があるため、活用を検討しましょう。
アスベストが見つかった場合、その除去費用は数十万円から数百万円と高額になるケースも珍しくありません。
この費用は売却価格に直接影響するため、売主と買主の間で価格交渉が行われることになります。
契約不適合責任と売主の告知義務
不動産の売買契約においては、売主には買主に対して、建物の重要な事項を正確に伝える告知義務があります。
特にアスベストの存在は、買主の健康や将来的な費用に直結するため、非常に重要な告知事項です。
もし売主がアスベストの存在を知っていたにもかかわらず告知しなかった場合、または「調査しなかった」ためにその存在が不明なまま契約が締結された後にアスベストが見つかった場合、買主は契約不適合責任を追及することができます。
これは、買主が期待した品質を満たしていない場合に売主が負う責任です。
●売買契約における「告知義務」の重要性
不動産の売買契約において、売主は知っている建物の欠陥や問題点について、買主に告知書を通じて開示する義務を負います。
アスベストの存在は、建物の安全性に関わる重大な情報であり、これを隠蔽したり、知らなかったフリをして売却した場合、後日トラブルに発展する可能性が極めて高くなります。
売主が負う契約不適合責任は、損害賠償請求や、最悪の場合は契約解除にまで及ぶことがあります。
●調査結果は正直に、書面で伝える
アスベストの調査結果は、必ず書面で残し、その内容を正確に告知書に記載することが重要です。
これにより、売主は告知義務を果たしたことになり、後日「知らなかった」という主張は通用しなくなります。
専門家による調査レポートを添付することで、買主に対する透明性を高め、信頼関係を築くことができます。
たとえアスベストが見つかったとしても、正直に開示することで、買主は納得した上で取引を進められるため、結果的にスムーズな売却につながります。
まとめ|アスベスト問題は早めの調査と正直な告知が大切
不動産売却におけるアスベストの問題は、売主が必ず向き合うべき重要な課題です。
2022年の法改正により、建物解体時のアスベスト調査は義務化され、その存在は買主にとって大きな懸念材料となります。
売却を成功させるためには、引き渡し後にトラブルにならないよう、売却活動の早い段階で専門家によるアスベスト調査を行い、その結果を正直に買主に伝えることが最も重要です。
たとえアスベストが見つかっても、その事実を隠すことなく開示し、適切な対策を講じることで、買主の信頼を得ることができ、スムーズな売買契約へとつながります。








