不動産を売買する際には様々な種類の書類を用いてやり取りを行います。
それぞれの書類に必要事項が記載されており、どの項目も契約においてはとても重要な事柄です。
その中でも聞き慣れない方も多い「買い付け証明書」とはどんなものなのかについて、こちらでご説明していきます。
どんなシーンで使われるものなのか、どんな点に注意が必要なのかについて詳しく見ていきましょう。
そもそも買い付け証明書とは何?
不動産の契約において、売買契約書や媒介契約書に関しては目にする機会も多いと思いますが、買い付け証明書に関しては「聞いたことがない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに買い付け証明書は100%提出する必要はありませんし、提出しなかったからと言って問題になることもありません。
●買主が売主に対するアピールの一つ
買い付け証明書は、要するに買主が「○○万円で購入したい」という意思表示の一環です。
買主である以上、「できるだけ安く購入したい」という意思を持っているのは当然のことですが、その思いを具体的に表すためのツールだと考えられます。
別名「購入申込書」や「買受証明書」といった名称でも呼ばれることがあります。
もちろんこの書類を提出することは義務ではありませんし、あくまで買主の思いを発散するものでありアピールの一例ですので、パフォーマンスとして行うか行わないかは買主の自由ということになります。
●法的な拘束力はない
「いくらで買いたい」と買取希望価格を伝えるために買い付け証明書を売主に提出したからといって、必ずしも買主がその金額で売却しなければならないわけではありません。
むしろ、買い付け証明書には法律的な効力や拘束力はありませんので、売主としては提出されたからといって構える必要はないと言えます。
また、法務局や税務局などに行って書類を用意するのではなく、仲介となる不動産会社が用意することも多いので、雛形には沿っているものの、法的効力は期待できません。
●記載される事項はケースバイケース
基本的に不動産会社が独自に買い付け証明書を用意し、売主に提出するケースが多いですが、記載する項目は物件の種類や状況によって異なります。
もちろん不動産会社によって用意する書類や参考にする雛形が異なりますので、記載項目は三者三様です。
基本的な項目を挙げると、買主の個人情報をはじめ、購入を希望する価格、金銭の授受に関する項目、引き渡しや現況についてなどです。
買い付け証明書における注意点
一見、「出したもの勝ち」といった感覚が強い買い付け証明書ですが、いくつか注意点がありますので、正しく認識をするためにもこちらを参考にしてみてください。
特に買い付け証明書を提出された売主は「必ずこの金額で売却しなければならないのか」と不安になると思いますが、そのような決まりはありませんのでご安心ください。
●必ず買主の希望金額で売却する必要はない
「証明書」という言葉からなんとなく強制力が働いているような書類に感じられるかもしれませんが、ご紹介してきたように買い付け証明書には法的な決まりや拘束力は一切ありません。
なので、当然買主が希望する購入金額で売却する必要はありませんし、必ずその購入希望者に売却する必要もありません。
特に人気の高い物件である場合は、購入希望者がたくさんいる状態となる可能性がありますので、あなたが売主である場合は「どの希望者に売却しようか」と選ぶ権利があります。
しかも、買い付け証明書に購入希望金額が記載されていることから、一番希望額が高い人に売却するのが理想的です。
買い付け証明書の提示を通じて、購入希望者の意思がハッキリと分かるのが嬉しいですね。
●損害賠償が発生する事案も
例え強制力や拘束力がないにしても、ほぼ売買が決定したとなった場合に、売主もしくは買主が契約破棄をしたり何か問題を起こした場合は、損害賠償が発生する可能性があります。
特に買主の勝手な都合により契約を流してしまった場合、買い付け証明書が購入の意思とみなされることから、売主から買主へ損害賠償を請求したという事例が過去にあります。
●信用度につながる
買い付け証明書を用意したことによって、「購入したい」という意思表示になるのは間違いありません。
この意思表示をしたにも関わらず、「別の物件が気に入った」とか「建物が崩壊した」など様々な理由によって自己都合で契約が白紙に戻った場合は、過失があった側の信用度が損なわれてしまいます。
●買い付け証明書を提出してきた人は購入意欲が高い
基本的に買い付け証明書まで発行するということはかなり購入の意思が高いと考えられます。
人気物件や需要の高い物件では多くの購入希望者から申し込みが入る可能性があり、同時に買い付け証明書が集まってくるでしょう。
売主として注目しておくべき点は購入希望金額はもちろん、「他者との差別化ができているか」という点です。
例えば、購入希望金額とは別に「売主の希望額に対して要相談」など書かれているかどうかをチェックしましょう。
まとめ
必ず提出をしなければならないわけではない買い付け証明書ですが、提出することによって買主が確かにその物件を購入したいという意思表示となります。
売主はこの書類によって、買主の希望を知ることができたり、他の購入希望者と比較検討することが可能なのです。